
勤務マネージャー
株式会社相鉄リビングサポート
マンション管理員の出退勤をIVRで自動受付
管理会社の業務効率と信頼性を向上
分譲マンションの管理員は、居住者全員が参加するマンション管理組合と契約した管理会社から派遣されているケースがほとんどだ。マンションでの永住志向が強まるなか、新たな法律の施行もあって、管理会社の仕事の質やコストに対する目はますます厳しくなり、企業間競争も激化している。マンション管理会社の一社、相鉄(そうてつ)リビングサポートでは、このほど管理員の出退勤をIVRで受け付けるシステムを導入し、会社からは目の届かない管理員の勤怠管理に積極的に乗り出し、より信頼される企業に向けた取り組みを進めている。
USER's VOICE
電話番号と社員番号を認証し、出退勤を受け付け
相模鉄道(相鉄)は、横浜を起点に神奈川県央部に路線を持つ大手私鉄。相鉄リビングサポートは、相鉄が保有するビルやマンションを管理する相鉄グループの一社、相鉄企業(株)から今年の1月にマンション管理事業の専業を目的に会社分割した会社だ。
同社が派遣する管理員は、マンション管理室に出勤すると、まずは電話機に向かい、出勤の登録を行う。
システムに電話をかけ、6ケタの社員番号をプッシュする。
「○○さんですね。出勤は1を、退勤は2をダイヤルしてください。」とのガイダンスに、1をダイヤルすると「今日も一日がんばりましょう」、2で「お疲れさまでした」との返答を聞くと受話器を置く。
この間20秒弱、出勤時刻の登録が完了し勤務が始まる。
システムは、ナンバー・ディスプレイ対応により、登録された電話番号であるかを認証し、紐づけられた社員番号と照合すると、出退勤の時刻を登録する仕組みだ。
マンション管理各社では今、労務管理の基本となる管理員の出退勤時刻の管理に頭を悩ませているという。1人の職場にタイムレコーダーを置くわけにはいかず、自己申告に任せているケースがほとんどだ。
神奈川県下を中心として、100か所を超えるマンション組合に150名の管理員を派遣している相鉄リビングサポートでは、その課題に「勤務マネージャー」と名付けたCTIシステムで対応している。
「導入には3つの理由がありました。」 と語るのは、システム導入責任者である業務管理部の高田取締役部長。単に管理上の問題だけでなく、その理由には管理組合との関係や管理員の高齢者問題も含まれた背景があった。
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- 高田取締役部長
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- 相鉄リビングサポート本店
導入を決めた3つの理由
高田部長は続ける。
導入理由の1番目は、管理組合との関係。
「これまで出退勤の時刻は、管理員自ら用紙に記入してもらっていました。あくまでも管理員の自己申告になるので、その内容は管理員の『性善説』に立って信用するしかありませんでした。しかし、客先である管理組合に対しても自信を持って説明できるかといえばまた別の問題です。その点、何らかの客観的な手法と記録が求められていました。」
2番目は、管理員の安否確認。
「管理員は比較的高齢者が多く、目が届きにくい管理室に一人で勤務しています。出退勤の状況を常に会社の方で把握しておくことは、勤務中に管理員が倒れた時など、万一の場合の早期発見のためにも有効だと考えました。」
3番目は、管理業務の効率化。
「前述の用紙は、回収後OCR装置にかけ、時刻を読み取るのですが、くせ字や記入漏れなどで読み込みエラーも多く、記入内容と読み取り結果の照合に時間をとられていました。もっと簡便かつ正確に管理する方法がないか模索していました。」
当初は、出退勤時に会社の担当へ電話してもらう、あるいはメール送信で出退勤の記録を残すことも検討されたが、受け手側となる会社の対応を誰がするのか? また、すべての管理員がパソコンを操作できるのか? など、どれも現実的ではないとされた。
「そこで、音声自動応答(IVR)による受付の仕組みが最適だと判断し、システムの検討を進めたのですが、新たにシステムを構築するとなるとかなりの費用が必要だとわかりました。そんな折、同業の管理会社では(株)コーネルさんが提供する低コストのパッケージシステムを導入したと聞き、その評判を確認したうえで、導入を決めました。」と、高田部長。
「新しいシステムは、新しい会社から」の考えで、専業化に伴う新会社スタートを機に1月からシステムの運用が始まった。
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- 電話による出退勤入力操作の様子
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システムサーバー
その上にはマルチメディアボックス
ネットワーク上からも出退勤状況を確認
1月からの3ヵ月間は、従来からのOCR用紙記入と新システムとを併用し、操作が慣れた4月からは新システムのみの運用に絞られた。
複数の管理員をまとめるチーフ管理員の大畑さんは、「運用当初は、社員番号の入力ミス、操作間違い、話中などで、電話はかけるものの入力をあきらめ、用紙記入を続ける管理員もいましたが、すぐに慣れたようです。記帳の必要がなく、電話から簡単に入力できるので高齢の方や入って間もない管理員でも対応できます。」と語る。
出退勤の入力は、事前に登録された管理室の固定電話からに限られる。システムが発信者の電話番号をチェックするので、『遅刻しそうなので出勤途上の携帯から』、ということはできない。
出退勤の結果は、1ヵ月間の勤務実績表として自動生成され、月に一度システムから管理室にFAX送信され、管理員の確認を得る。 データは、給与ソフトと連携しており、実労働時間として給与データに反映される。
また、出退勤は、「勤務マネージャー」に接続されたPCでも確認できるので、社内の担当者からもその状況がリアルタイムに把握できる。定められた時刻が過ぎても入力がない場合、そのマンション管理室に電話して確かめることもできる。
なお、発信はフリーダイヤル(0120)で、通話料は相鉄リビングサポートが負担する。「いくら業務上の通話とは言え、毎日発生するので、管理組合に負担してもらうわけにはいかない。」(高田部長)との配慮からだ。
システムの核となる音声応答/FAX処理には、マルチメディアボックスVS-411MBが1台使用され、4回線で運用されている。
9時前・17時過ぎには出退勤が集中するので4回線で大丈夫かとの不安があるが、開発元のコーネルの試算によると、操作に慣れてくれば通話時間は平均して19秒程度。1回線あたり約80名が目安となるようだ。特に退勤時は集中し、話中が発生することもあるが、それほど支障はないとのことだ。
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- 大畑チーフ管理員
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出退勤の状況は、社内の担当者からも
リアルタイムに確認できる -
- マルチメディアボックス VS-411MB

厳しくなる競合環境で付加価値と差別化を
マンションへの永住志向が年々高まるなか、2001年に施行された「マンション管理適正化法」により、管理会社に一層の責任が求められるとともに、管理組合にも努力義務が課せられ、これまでのように管理会社に任せきりでは済まなくなった。管理会社側からすれば、なれあいの関係から、選ばれる関係になってきたともいえる。
市場に目を移すと、08年秋のリーマン・ショック以降、新築分譲マンションの販売はかつてなく冷え込む一方で、継続的な収益確保が期待できる「ストック事業」といわれる不動産管理業に注目が集まっている。
しかし前述のように、管理会社を見る管理組合の目も厳しくなり、M&Aや新規参入により、競争環境も激しい。
マンション管理会社は、既存のマンションとの契約をいかに継続し、新たな契約先を獲得していくかが迫られている。そのためには管理会社自らが節度を持ってエリを正し、管理組合との信頼関係を築いていくことから始まる。
業務の精度を高め、責任ある管理サービスを提供していくためにも、このシステムは大きく貢献し、他社との差別化を図る要素となっていくだろう。
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高まるマンション永住志向
(国土交通省「マンション総合調査」から) -
- 求められる住民との信頼関係
株式会社相鉄リビングサポート
〒241-0821 横浜市旭区二俣川2-64-4
TEL:045-360-0061(代) FAX:045-363-1550
URL:http://www.sotetsu-ls.co.jp
E-mail:general@sotetsu-ls.co.jp

株式会社コーネル
システム営業グループ グループ長 梶 毅一郎
TEL:06-6221-3038 / FAX:06-6221-3039
URL:http://www.cornel.co.jp / E-mail:info@cornel.co.jp

より多機能・高品位なシステムにバージョンアップを予定
今回のシステムは、VOISTAGEパートナーの(株)コーネルが開発・提供する勤怠管理パッケージシステム「勤務Manager」を使用したものだ。マンション管理員やビルメンテナンス・介護スタッフなど、多地点にスタッフを派遣している業務に向け07年に誕生した。
営業を担当した梶グループ長にその経緯と今後の展開について伺った。
マルチメディアボックスのアドバンテージ
「当初は、某社製のCTIボードを使用していたのですが、ボード搭載スペースの関係でサーバーの種類やサイズが限られ、拡張性にも課題がありました。そこで今回のシステムを機に外付けタイプのVOISTAGEのマルチメディアボックスの使用に切り替えました。
現在商談中の案件のなかには数千名規模の管理員を擁する大手マンション管理会社もあります。従業員数に応じて電話回線数も数十回線の規模になります。その場合、カードを搭載したサーバーが何台も必要。設置スペースの点でもメンテナンスの点でもマルチメディアボックスのアドバンテージは高い。今後もVOISTAGEを使用し続けるつもりです。」と評価する。
バージョンアップとシリーズ拡充
梶グループ長によると、現在、マンション管理各社では、紙ベースの出退勤管理がほとんどのようだ。ASPサービスによるシステムも存在するが、利用人数に応じてコストがかかってくるので大手では利用しにくい。また、インターネットを活用したグループウェアで管理していた会社もあるが、管理員のPCリテラシーの問題で電話への置き換えを検討しているという。
「『勤務Manager』は、これまで7社に採用され、数社の管理会社と現在商談中です。今回の成功を見て、相鉄リビングサポート様と同じグループ会社で、1,000名規模のビルメンテナンス・スタッフを抱える相鉄企業(株)様でも導入を検討していただいています。」と、梶グループ長。
今後は、予定の出退勤時刻が過ぎても入力がない場合にメールで管理者にアラートを発信する機能の追加や、名前の読み上げにVOISTAGE人名音声ファイルを使用するなど、多機能・高品位なシステムにバージョンアップしていく計画だ。
「大手企業には今回のようにネットワーク版を、小規模のお客様にはスタンドアロン版『勤務Manager -Light-』を用意しましたので、さまざまな規模や業務形態に対応したソリューションを提供していくことができます。」と、販売にも自信をのぞかせる。
ご注意
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