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ホテル予約システム「HOTダイヤル」 |
激化するホテル戦争の中で、期待を集めるサービス、 |
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ますます激しくなる競合環境の中で、ホテルにとって客室の稼働率を確保していくことは生き残りをかけた重要な要素といえる。また、利用者にとっても、急な出張の際のホテル予約には、一軒一軒電話をかけるなど、苦労した経験のある人は多い。多くの提携ホテルをもつ日本旅行では、これらホテル・利用者双方のニーズを効率よく結びつけるCTIサービス、「HOT(Hotel Order Telephony)ダイヤル」をこのたび福岡市内で本格的にスタートさせた。意外な感もあるが、この分野では国内初のサービスだ。 |
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●利用者とホテルの「すれ違い」を解消 |
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夜のターミナル、電車から下りたビジネスマンが、タウンページ首っ引きで公衆電話から電話をかけている姿を見たことはないだろうか? これは、ホテルの確保もままならない急な出張で、出張先から周辺のホテルに一軒一軒予約電話をかけている姿だ。 片やここ数年、大都市圏ならずとも地方都市でもシティホテルやビジネスホテルの競争が激しさを増している。とりわけグルメや観光スポットも多く、コンベンション誘致にも熱心な福岡市は、都市規模の割にはもともとホテル数が多い(今年の3月時点で108軒:16,000室)それが、4月以降急激に増え、10月現在では124軒(18,300室)のホテルが市内に展開している。しかし、景気の影響もあって今後大幅な入込客数の増加が望めない中、かつてない厳しい競合状況が訪れようとしている。 |
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そんな、利用者とホテルの「すれ違い」を解消するCTIサービスが福岡市でスタートした。運営するのは、ホテル激戦区、福岡市を拠点とする日本旅行・九州営業本部だ。今回のサービスの「仕掛け人」ともいえる同社販売部の中村課長は語る。「当社の提携ホテルには、ぜひとも競争を勝ち抜いてほしい。そのホテルにとって『客室稼働率』の向上はいわば死活テーマ。一方お客様(利用者)からすると、当社を通してホテルを予約いただく場合、営業時間中に限られ、特に急な出張の際などにはご不便をかけていました。これらに向けて当社ができることは何か?を考えていたんです。」 その解決法を、同じ福岡市に本社を置く(株)コンピュータコンビニエンスに求め、半年かけてできあがったシステムがCTIによる電話予約サービス「HOTダイヤル」だ。98年5月から登録ホテル15軒で試験運用をおこない、実際の使用を通してさまざまな改良を加えたうえで、99年10月からは市内の主要ビジネスユースのホテルを網羅する、25軒に充実させ本格的に運用を開始した。 |
●シンプルに、そしてきめ細かく |
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![]() システムの第1の特長としては、シンプルな操作環境に配慮したこと。具体的には、ホテル側でのデータ更新(メンテナンス入力操作)を極力簡単にしたことだ。ホテルには、パソコン等の専用端末は必要なく、電話からのダイヤル操作で、空室状況や料金設定がおこなえる。このことで、常に最新のデータが利用者に提供されるとともに、直前の空室を埋めるために料金を急遽改定することもできる。客室稼働率を向上させるための、日々のきめ細かい操作がホテル側から自在にできるようになった。 第2には、すべてを自動化せずに、人が介在するシーンを残しておいたことだ。つまり、予約については自動受付とせず、ホテルに転送することとした。ホテルのフロントに直接繋がることにより、安心して予約がおこなえ、ホテルの場所や朝食、駐車場など、宿泊に付随するさまざまな問合せや確認もその際にでき、いたずら予約の防止にも効果がある。機械にしかできないこと、逆に人だからできることをうまく切り分けている。 ホテルとしても、日本旅行提携ホテルであれば登録料は無料、あらたな設備投資も不要で、リスクなしで利用窓口が拡がることになり、利用者・ホテル双方にデメリットのまったくないシステムだ。 |
●利用の実態は? |
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利用状況はどうか? 本格的にスタートした10月以降の状況は集計できておらず、試験運用期間(17ヶ月弱)でのデータとなるが、アクセス数は総数13,368件、月平均では約800件だった。実際のホテル利用(転送)率はこれよりは低くなるものの、試験運用期間とはいえ、かなりの数字といえる。なお月別ではスタート直後は別として、98年では7月・11月、99年では2月・8月が多い。これは「コンベンションシティ」を標榜する福岡市の各種コンベンション・学会等開催月に連動しているばかりか、祭り・イベントや夏休みシーズンなどにも増えており、観光にも広く利用されていること示す。 なお、予約日はアクセスの当日・前日・前々日で7割以上を占め、利用時間帯別では10時・17時・21時台で多くなるなど、多くの直前の予約ニーズに24時間サービスが確実に対応していることがわかる。 ホテル側の声も聴いてみた。博多東急ホテル・江崎客室支配人は話す。「このサービスには注目しています。ただ、ホテル利用には、旅行社や信販系会社等の宿泊サービスプランも多様で(同ホテルの場合は50種以上の企画商品がある)、フロントに徹底させるのも大変。そこで、『HOTダイヤル』も含めたオンライン担当のフロントスタッフを設け、的確な応対と空室状況に応じた迅速で柔軟なメンテナンス(料金設定)ができる体制をつくりました。週の初めが弱い当ホテルの場合、電話から容易に操作がおこなえるこのシステムは助かります。」と好評で期待も大きい。 |
![]() ■博多東急ホテル・江崎客室支配人 ![]() ■ホテルフロント |
最後に、今後の展望を日本旅行・中村課長に伺った。「これからのポイントとしては、いかにこのサービスをより多くの人に知ってもらうかということ。そのためにチラシを7万枚用意し、ホテルに置いてもらうとともに、九州・西中国地方で活躍する保険会社のセールスレディ5,500名にもお願いし、訪問先企業で配ってもらうことにしました。また、日本旅行の旅行パンフレットやJAF会報にも掲載し、NTTドコモiモードへの展開やタウンページなどの媒体への広告出稿も予定しています。これらのPRにより、満足した結果が得られ次第、東京・大阪など他地区へも順次拡げていきたい。」と、相乗的な告知の成果がこのサービスの今後のカギを握っているといえそうだ。 |
ただ、日本旅行としては、「このサービスだけでの収支にはこだわっていません。このサービスによって、これまで関わることのできなかった、直接ホテルを予約する利用者を取り込むことができる。そのニーズや利用実態を把握することは、これからの事業展開にも有用で、マーケットリサーチの目的も兼ねています。」としており、戦略性のある取組みであるともいえる。 いずれにしても福岡(博多)に出張の際は、ぜひこのサービスの利用をお薦めしたい。便利なばかりか、きっと「掘り出し料金」も見つかるはずだ。 |
HOTダイヤル(福岡に宿泊の際はぜひご利用ください) |
●日本旅行 九州販売本部 販売部 〒812-0012 福岡市博多区博多駅中央街8-36 博多ビル3F TEL:092-451-5536 http://www.nta.co.jp/ |
![]() 株式会社コンピュータコンビニエンス
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●究極の端末、電話を利用して |
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「日本旅行・中村課長とは、ある会合でご一緒した際にホテルの稼働率向上について相談があったのがきっかけです。実は私も、駅からの電話でホテル探しに苦労することがよくあったので、一利用者の立場からシステムを発想することができました。」と話すのは、このシステムを開発した(株)コンピュータコンビニエンス・野藤社長だ。 VOISTAGEを利用した音声応答サーバーは同社内に設置されており、予約用に4回線、ホテルからのメンテナンス入力用に2回線で運用している。「このサービスについては、当初インターネットでも…と思いましたが、増えているとはいえ、ネットの国内利用者はたかだか1千万人強。対し、携帯も加えた端末としての電話は今や1億2千万台以上。普及率や操作の容易性、モバイル性からいっても電話が唯一かつ最適でした。ホテル側からのメンテナンスに電話を利用したことも、そういった理由です。」 このシステムは、特許を出願するとともに、パッケージとしても販売されており福岡以外では、えひめリビング新聞社が、愛媛県松山市と道後温泉の主要ホテル・旅館15軒でサービス(089-947-7744)を開始している。 |
![]() ■システム概念図 |
![]() ■HOTダイヤル サーバー |
同社は、CTI分野と並んで、「カオス」理論を応用したシステム開発では以前から名を知られている企業。最近も、携帯式心電計と携帯電話を繋ぐことで、心電図を受信した遠隔の主治医から電話で指示を受けることのできるシステムを医師の指導で開発協力するなど、ユニークで実用性の高いシステムを数多く手がけるVOISTAGEパートナーだ。 |
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